2011年01月18日

小堀遠州

小堀遠州という名を聞いたのは、多分二〇代の頃。日本庭園のデザイナーとして記憶していた。
しかし、なんで名前が僕の故郷の「遠州」なんだろうと?ずっと、気になってはいた。
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でも、昨年こんな本を読んで全てが氷解した。
本名は小堀政一。駿府城普請奉行、つまり静岡市にあった駿府城の建設を任され、以後小堀遠州と呼ばれるようになったという、、、。
 しかし、その多彩ぶりたるや凄まじい。
まづ、千利休の後継者としての茶人であり。桂離宮の設計者であり。多くの日本庭園の作庭家でもある。
近年茶の湯の人気が高まったり、ブルーノ・タウトが激賞した桂離宮の再評価が建築界で高まったりで、数々の出版物が出ているが、利休のように映画や小説になったり、織部のように漫画化されたりはしていないので、
一般的にはそれ程知られていない。
 さて、僕の生まれた現牧ノ原市の隣町、島田市に「茶の郷」という施設があり、そこに遠州の茶室と庭園を再現したものがあるとの情報をネットで見つけたので帰郷の折尋ねてみた。
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抹茶とお菓子でもてなしてくれる。器はこれも故郷の焼き物「志都呂焼き」。
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にじり口からの庭の様子。
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遠州好みの特徴でもある、砂刷り天井。利休のものより明るめで軽いニュアンスが「奇麗さび」と呼ばれる所以。
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庭園にある東屋の天井が成る程桂離宮を彷彿させる。
しかし、灯台元暗しとはこの事、今の今まで全く知らなかった。
地元の人に聞いても誰も知らない、、、。
先日の小布施の北斎館の様に、日本の地方には日本人が知らない貴重なお宝がまだまだ有るような気がして来た。
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これは、我が家に昔からあった志都呂焼きの壷。
子供の頃は「なんか真っ黒い地味な花瓶」と思っていたけど、もしかしたら貴重なものかもしれない、、、。
Twitterはhttp://twitter.com/#!/Shinsakuron
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2008年03月27日

 人は昼食べたカレーライスが,どんな格好をした皿に盛られていたかなんて大抵覚えていない。
 しかし、懐石料理などになると、料理だけでなく盛られていた器の事も結構記憶していたりする。
 つまり、手っ取り早く空腹を満たす為の食事と、それなりの出費を覚悟で質の高い時間を堪能しようとする食事とでは料理を前にした時の意識の持ちようも違うのだ。
 もっと、具体的に言えば、懐石は食べ物自体だけでなく、器や、周りの空間から会話、カウンターの木目とか肌触りまでもが料金に含まれているとも言える。
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 さて、この料理の話に絵画を当てはめて考えると、器に相当するのが額縁。カウンターにあたいするのが壁といえるかもしれない。
優雅に食事を楽しみたいのなら、器や空間にこだわりたいのと同様。
優雅に絵画を鑑賞したいのなら、額や壁にもこだわって欲しい。
しかし、悲しいかな料理と比較すると、絵画の盛りつけはかなり意識が低い。なんのこだわりもない、チープなクロス張りの壁とか、ひどい場合は安っぽい間仕切りパネルに適当な額縁、いい加減な照明だったりする。
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 上の画像はルーヴルの中にある小部屋のオランダ絵画の展示風景。
どれも有名作家のものでもないし小品ばかりだが、シックな壁に上質な額を纏った絵画が程よい照明で浮かび上がっていて、絵を描く者にとっては羨ましいかぎり。
でも、もしも、こんな展示状況を日本で期待しようものなら、とんでもない費用を覚悟しなければならないだろう。
まあ、それ以前にこんな空間も額縁職人も不在というのが今の日本の現状だが。

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2008年02月29日

ルーヴル

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新しい美術館の次は、保守本流ご存知ルーヴル美術館。
(バーチャル・ツアーはこちら)http://www.louvre.fr/llv/musee/visite_virtuelle.jsp?bmLocale=enこういう大混雑が予想される美術館は、朝一番に限る。
雨の中傘をさしながら並ぶ事約三十分。
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やはりこういう絵は、ひとけの無いしんとした空間で眺めたい。
これ、ボッティチェリの中でもかなり良い出来のものですね。
肌の質感が秀逸。
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こっちは、ボッティチェリのフレスコ。かなり大きなもの。
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デイテール。
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フアン・アイク。
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アングル。
こんなクオリテイーとバラエテイー、圧倒的な量で、入館料は映画を見るより安い、しかもご飯を食べに外出して、再入場可という、、。
大混雑しないわけがない。
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2008年02月27日

ケ・ブランリー「垂直の庭」

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「垂直の庭」?そんな、バカな!
と、一瞬耳を疑うでしょうが、、。よくよく考えてみると、例えば石垣に苔が生えていたり、石の隙間とか木の幹に草が生えていたりと、
植物って根をはるものがあって水があれば、斜面とか垂直の壁みたいな所でもしっかり
生きて行けるんですよね。
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そんな発想で植物学者パトリック・ブランhttp://www.midorinokabe.com/によってデザインされたのが、この垂直庭園。
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ケ・ブランリー美術館は、ジャン・ヌーヴェルによってデザインされた美術館とセーヌ川に向かうこの壁で訪れる人々に強烈な印象を植え付けています。
また、この壁の規模縮小版は、表参道に昨年オープンした商業施設「ジャイル」http://gyre-omotesando.com/のエントランスでも見る事が出来ます。
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2008年02月26日

ケ・ブランリー庭

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皿の上に盛られたお肉を建造物に例えるなら、脇に添えられた野菜がお庭。あくまでもお肉がメインなんですが、近頃は付け合わせの野菜の質と量がクローズアップされている。
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そんな昨今のトレンドがここでも垣間見られます。
では、何故今、庭が重要視されるかって?、一つは温暖化に対する配慮と言う事は説明するまでもありませんが、
人々が癒しとかゆとりなんてもの求める傾向にある現在。
散策という時間がとても重要になって来たのだと思います。
休日にこういう施設に来て、館内の展示を見た、その後のプラスアルファ。
それがこういう周りの環境、風景の魅力に求められる。
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ここ、ケ・ブランリーの庭は先日紹介したフランス式幾何学庭園の
ようにカチッとしたものではなく、
むしろかなりラフにワイルドにデザインされているところが好感がもてます。
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池に葦が茂っていたり、ススキがぼうぼうと伸びていたり、、、。
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また、こういう施設の庭って、どうでも良い現代彫刻なんかが置かれているのをしばしば見かけますが、
この、池の中の鉄のオブジェなんかは、さりげなくて可愛い。

映画を見た後。食事をしながらの窓の外の眺め。
これから庭の存在はますます重要になるでしょう。
そもそも、パリとか東京みたいに地価の高い場所では、
多額の金を出して買った土地を有効に使うなら、
重箱を高く積み上げて、容積を多くとるのが得策ですよね、、。
そういう意味でも、この庭というものはとりわけ都市においては、
贅沢な土地の使い方という事になります。
休日を優雅に過ごしたいのなら、
効率優先の高層ビルより、空間のゆったりとした庭で。
こういう傾向はこれから顕著になると思いますので、
六本木に建てられた商業施設などは、
単にバブルの遺産として悲しい末路を辿る事でしょう。


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2008年02月19日

ケ・ブランリー美術館

さて、長い間「フランスの庭」と称されるロワール地区の記事が続きましたが、
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TGVでパリに移動。次は最新の人気スポットmusee du quai Branly  http://www.quaibranly.fr/
を紹介します。
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ケ・ブランリー美術館は前大統領シラクの肝いりで建設された非ヨーロッパ(アフリカ、オセアニア、アジアなど)の文化を紹介するための美術館。
2年前にオープンして今新たな観光スポットとして注目されています。
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デザインはジャン・ヌーヴェルhttp://www.operacity.jp/ag/exh46.html
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まづ、この斬新な外観、壁から出っ張った箱みたいなものがそれぞれの展示ブースで、それらが壁の中に収められるのではなく外側に突起している。
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館内はこんな感じでかなり暗めの照明。
各地の民族衣装とかお面などがの展示物が、闇からボっと浮き上がる感じで設置されています。
昨今の美術館の、光が降り注ぐような開放的な空間のとは対照的に、
かなりミステリアスな雰囲気を醸し出しているところが新鮮です。
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2008年01月09日

レオナルド・ダ・ヴィンチ

ダ・ヴィンチ・コードと言う小説と映画が大ヒットした昨今,さすがにレオナルド・ダ・ヴィンチLeonardo di Ser Piero da Vinciの名前を知らない人はいないと思いますが、レオナルドがフランソワ一世に招かれ晩年をここフランスのアンボワーズで過ごし、この地で世を去った事はあまり知られていないのではないでしょうか。
シャンボール城という巨大な城の設計にかかわったという話を以前聞いた事がありますが、
ここの、シャトーホテルの森の入り口にある小さな門もレオナルドがデザインしたと言われています。
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質素な佇まいだけど、緑の中でルネサンスらしい存在感を醸し出していますね。
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さて、森の中に足を踏み入れるとこんな巨木が、
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そして、あたりの地面には一面薄紫色の小さな花が、一見菫に見えますが、小さなシクラメンのようです。
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そして、芝生の上に点在する立て看板のようなもの、実はこれ、ある写真家の作品なんです。これが広大な庭の中に延々とたっている。つまり、野音ならぬ野展。野外ギャラリーなのです。
 ホテルにお土産屋に画廊と、文化遺産の有効活用というわけですね。
 ところで、ダ・ヴィンチといえばこのサイトhttp://www.haltadefinizione.com/jp/cenacolo/look.aspご存知でしょうか?ミラノにある「最後の晩餐」の壁画が至近距離から見られるという画期的なサイトです。近づいたり、離れたりまるでグーグルアースを見ているみたいに壁画を眺める事が出来ます。
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2006年10月26日

細部

ブリュージュのように街自体が美術館のような街は、散策しているだけで、魅力的なディテール(細部)に巡り会える。
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まず、この煉瓦の壁。20世紀が発明したコンクリート建築は人類始まって以来の大失敗作で、出来立ての新品の内は良いが、時間を経つごとに醜さを増し、数十年で粗大ゴミと化す。
しかし、この煉瓦と言う素材は多分出来立ての時は妙に赤々しくて軽薄な表情をしていたであろうが、時が経ち表面にカビや苔がつくと、いわゆる美術や建築の世界で言うところのエイジング(汚しとも言い、つまり時代がかった渋みを出す技術)が施されご覧のように絵画のような味を出す。
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次にこのベンチをご覧下さい。座板と背もたれの板を支える鉄の部分がなんとドラゴンの形をしているではありませんか、多分昔に造られたものなのでしょうが、ハリーポッターなどのファンタジーが流行する昨今、もっともお洒落なベンチとも言えるでしょう。
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次にこの鉄板にアルファベットをくり抜いた門扉、何語かは分かりませんが多分文章が書かれているのでしょう。この門扉に斜めから光が差し、道に落ちた影が詩だったりする?なんて演出かもしれません。つまらない現代美術などより全然美しいコンセプチュアル・アートです。
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次にこの可愛い看板をご覧下さい。三日月の顏も周りの装飾も繊細で奇麗な形をしています。
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2006年10月06日

芸術と経済

A&E1.jpgアントウェルペン王立美術館

ベルギ-の主要都市。ブリュッセル、アントウェルペン、ブルージュなどを訪れると、どこの街にも美術館があり、食傷気味になる程の膨大なフランドル絵画に遭遇します。
では、ベルギーにはなぜこんなに多くの重厚な絵画が産まれたのでしょう?
それは当時、絵の才能がある人間がたくさん産まれたから?それだけの理由でしょうか?
では、今のスポーツを例にとって想像してみましょう。例えば、身体能力の高い人間が産まれても、スポーツを必要とする人間がいないかぎり、スポーツ選手は育たないのではないでしょうか?
もっと、現実的な言い方をすれば、スポーツ選手を育成するスポンサーがいたり、スポーツ選手に歓声をおくったり、観戦にお金を払う観客がいない限り、才能は開花しないのではないでしょうか?
優秀なサッカー選手が続々と登場し、サッカーが盛り上がるのは、そこにお金が流れているから、もし、そうでなかったら、遊びたい盛りの若い時間を日々技術の向上に費やし、危険をおかしても果敢に戦い続ける選手のモチベーションは何処から生まれるのでしょう?
スポーツや芸術というものを経済と関連させて語るのは、好ましくないという風潮は確かにあるかもしれません、しかし、サッカーがプロ化していなかったら、今のような成熟はなかったでしょう。
芸術も同様で、芸術が花開くにはそれを支える経済が背後にあったからなんです。
当時この地方は川の岸辺に茂った亜麻草を原料にしたリンネル(リネン)が生産され、繊維産業が発達し、ヨーロッパの富が集中した。そこで生まれた富裕層は(当時まだ写真などない時代だったから)画家や彫刻家に充分なお金を払い仕事を発注した。すると、画家や彫刻家も依頼主に気に入られるよう技術に磨きをかけ、若干男前、美人に描くよう努力した。
A&E2.jpgA&E3.jpgアントウェルペン大聖堂のルーベンス作「キリストの降架」

ここの教会にあるルーベンスの絵画などは、そうした商工業の成功者達が、家内安全や事業の成功を願い守護聖人やキリストを画家に描かせ教会に奉納したものだと伝えられています。
A&E4.jpg広場にあるルーベンス像
 
また、「画家のアトリエ」という言葉から、現代人は「孤独」という言葉を連想されると思いますが、ルーベンスのアトリエなどは弟子や助手でごったがえした、むしろ工場というニュアンスに近いものだったとも伝えられています。
 さて、今日、日本の美大などからも、毎年絵画や彫刻を勉強した若者が世の中にでるわけですが、それを受け入れるインフラがない限り、その才能を育成し開花させる事は不可能です。
「芸術やスポーツは純粋なもの」という常識から、少しはなれたところで思考が出来ないと。やがて、経済の衰退と共に美術も音楽もスポーツも先細りしかねないでしょう。
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2006年10月02日

アールヌーヴォー建築

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今日ご紹介するのは、グランプラスから王立美術館に向かう途中にある、楽器博物館「Musical Instrumehts Museum」略して『MIM』(可愛いサイトはこちらhttp://www.mim.fgov.be)。
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建物の上の方にOld Englandとありますが、前はオールドイングランドという名の百貨店だったものを楽器博物館に転用しているのだそうです。
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ブリュッセルにはこういうデコラティブなアールヌーボー建築が点在していて、近頃ではアールヌーヴォー建築ツアーなるマニアックな巡礼も密かに流行しているようです。(ご興味のある方はこちらのサイトhttp://www.belgium-travel.jp/destination/by_theme/culture/artnouveau.htmをご覧下さい)
しかし、小説「九月の四分の一」の中でも語られておりますが、こんなに丁寧に装飾された美しい建築が一時のモダニズムの台頭の中で時代遅れとされ、白い煙を上げて取り壊されていた、というのだから、、、「壊されてしまったビル、それと同時にどこかえ消えてしまった設計という概念や美意識。、、中略、それらも白煙もろとも一瞬に消えてしまったのだ。そして一度壊されたビルは、もう二度と元に戻ることはない。永久にである。」(小説九月の四分の一より)なんとも無惨、無念。
しかし、流行というのは恐ろしい。今、この建築を目の前にしたら誰もがこれが取り壊して良いものだとは思わないだろう、でも、装飾を排したモダンが良いとされたムーブメントの中では、これは悪とされたのだから。ひどい言い方をすれば集団的狂気というか、あるイデオロギーがある民族を虐殺に至らしめた歴史的惨事とも似ていなくはない。しかし、虐殺を先導した者は後に犯罪者としての裁きを受けるが、こういうものを破壊した者はなんの裁きも受けないのである。人を殺したら犯罪。しかし、人が考え作り出した概念や美を殺しても無罪。と、いう。
今さら、取り返しのつかない事を嘆いてもしかたないが、こういうものを保護し、むやみに取り壊さないよう法律で取り締まる事はこれから検討しなければならないだろう。
「美しい国」などというキーワードをスローガンとするならなおさの事だ。
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2006年09月25日

ベルギー王立美術館

グランプラスから十分程歩くと、レジャンス通りに出る。このレジャンス通りに面して今上野の国立西洋美術館に来ているブリューゲルの絵画などを所蔵するベルギー王立美術館がある。
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これはそのベルギー王立美術館の入り口。四本のコリント式円柱が並び、破風の上の台座には「音楽、建築、彫刻、絵画」を表す立像が立っている。
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さて、このベルギー王立美術館。膨大なフランドル絵画を所蔵していて、のんびり鑑賞していたらとても一日では見終わらない。古典部門と近代部門に別れていて、上のフロアーが十五、十六世紀で、降りてくると、クノップフやアンソールなど、
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下のほうのフロアーには、マグリット、デルヴォーといった一連のベルギー出身の画家が陳列されている。
しかし、ベルリンの記事で「古典美術館でゴヤを見るのに四時間並ばされたが、現代美術館はガラガラだった」と書いたが、古典に客が吸い寄せられるのはどこの都市でも同じ。現代絵画は古典絵画の後に鑑賞すると、あまりの密度の軽さにどこか拍子抜けしてしまう。画集などで小さな図版を見ている時はそんなに気にならないかもしれないが、マグリットの絵などはあたかも学生の卒業制作でも眺めているような感じがしてしまうのだ。
それは、絵画だけでなく建築や彫刻も同じで作品に費やす時間が圧倒的に古典の作品と現代のものとでは違うからだ。
だらだらと時間を賭ければ良いものが産まれるというわけではないが、相当なセンスとアイデアが伴わない限り、膨大な時間と集中力を費やしたものに太刀打ち出来ないという事実を現代人はみとめないといけないのかもしれない。



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2006年09月01日

北京

いやはや、想像はしておりましたが、オリンピックを二年後に控えた北京Beijingがとんでもない事になっております。さながら現代建築の実験場と言いましょうか、世界のスター建築家総出演で前近代の名残を残す町並みと相まってブレードランナーの世界に突入しております。まずこの画像をhttp://www.youtube.com/watch?v=s0kWDZfJkuU&mode=related&search=zaha%20hadidご覧下さい。メガプロジェクトの波状攻撃。まず、オランダはロッテルダムの建築家「レム・クールハース」による設計の『CCTV(中国中央電視台本社ビル)http://www.youtube.com/watch?v=t_yOqtFHgPw&NR
』が、その異様な姿を現しつつ有ります。これだけでも充分ド派手なんですが、
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続いて、ドイツワールドカップの開会式を行ったミュンヘンの
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アリアンツスタジアムや青山のプラダブティックの設計でも知られるスイスの「ヘルツォーク&ドムーロン」の設計による、通称鳥の巣と呼ばれる『オリンピックメインスタジアム』.
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そして、オーストラリアの設計集団「PTW」http://www.ptw.com.au。による設計の水泳競技場Watercube-NationalSwimmingCenter。でっかい水槽が出現したみたいです。
そして、フランスのシャルルドゴール空港を設計した「ポール・アンドリュー」の設計による、池に浮かぶ卵『国家大劇場』と、二年後が楽しみというより「どうなっちゃうんだろう?」という、感じですね。
さて、近頃はYouTubeねたの記事ばかりでしたが、来週より 前のドイツ特集のような体裁の記事を書きます。で、次に紹介する都市はと言いますと、ベルギーの「ブリュッセル」。理由は、と言いますとキャトル・セプタンブル(九月四日)というパリのメトロ駅の名前を「九月の四分の一」と勘違いしたばかりに別れ離れになった男女の恋愛小説、大崎善生氏の「九月の四分の一」の舞台が
ベルギーはブリュッセルのグランプラスという広場なので、その、グランプラスの紹介からスタートしようと思います。また丁度東京でベルギー王立美術館の展覧会も始まりますので、この際ピーター・ブリューゲルからマグリット、デルボーから種々のベルギービア、ベルギー料理、そして、昔から素晴らしかったがあまり知られていないベルギーの音楽などを知っていただく上でもタイムリーかと思います。では、お楽しみに。

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2006年08月27日

ザッハ・ハディッド


ザッハ・ハディッドの存在を知ったのは、丁度20年くらい前、神田にある建築専門書店での事だ。まだ、具体的に建築らしきものが出来上がっていた訳ではなかったが、ドローウィングがあまりに素晴らしく、建築家というより非常にセンスの良いイラストレーターとして、いつも感心しながらドローウィング集を眺めていた。黒を基調にしたグレイッシュな色彩感覚といい、独特なパースペクティヴといい、いわゆるアーチストと言われる連中の絵より魅力があった。そのころ同じイギリスのAAスクール出身で元脚本家という経歴をもつオランダ出身の建築家レム・コールハースと供に建築界の中で異彩を放っているように僕の目に映った。と、いうのは、僕は建築が専門ではないのでその世界にはあまり明るくないのだが、洋書屋さんの話しによると、特にザハはドローウィングとか模型の人気は抜群なのに、そのあまりにも現実離れした形体ゆえ、アンビルドなどと呼ばれ、実際建築が実現し始めたのはここ数年のようだ。

そして、この二年前に出版された作品集だが、建築的な本というか、ワインレッドのケースが四つの空間に間仕切りしてあり、四冊の大きさの異なる本が収納されている。という、装幀家などには到底考えつかないアイデアでおおいに刺激された。
http://www.youtube.com/watch?v=YBxfKIfq2_M&mode=related&search=zaha%20hadid
さて、次にここでは、近年のザッハのプロジェクトがゆるいジャズのBGMとともに見られます。
そして、ザッハに次ぐ二番手はウィーンの建築事務所コープ・ヒンメルブラァウ(やはりロンドンのAAスクール出身)の仕事っぷり。BGMがなんとDORUMM'N BASEで、のりのりの感じが伝わってきます。ドレスデンのシナマ・コンプレックスに続き
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お隣の韓国釜山でもシネコンのプロジェクトが進行中のようです。
そして、三番目はここで今さら説明するまでもない、スペインはビルボアのグッゲンハイム・ミュージアム等のプロジェクトで有名なフランク・O・ゲーリーの画像です。
また、オランダの建築家レム・コールハースにつては、いずれロッテルダムの記事を書きますので、その時紹介します。
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2006年07月18日

ジョルジョーネ

さて、さらにここドレスデン、アルテ・マイスター・ギャラリーの所蔵するお宝と言えば、これ、
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ジョルジョーネの「眠れるヴィーナス」です。ジョルジョーネはヴェネツィア派の画家で、以前ヴェネツィアのアカデミア美術館でも原画を見ましが、石膏の画面に無駄な絵の具が盛られておらず、マティエールが奇麗。全体のくぐもり感というか空気が瞑想的で素晴らしい。その中でも後世のティツィアーノやアングルに影響を与えた傑作「眠れるヴィーナス」(しかも、全長2
メートル近い大作)が、まさか、ここにあったとは、、、、。
ガイドブックなどにものっておらず、なんの予備知識もないまま、いきなりこの絵に遭遇したので、思わずベンチに座ってボおっと眺めてしまいました。
しかし、ガイドブックをつくっている人とか、テレビのディレクターは美術の専門ではないからしかたがないが、もう少し勉強して欲しい。どうでも良いものを取り上げるくせに、大事なものを見逃しがち。この前紹介した、フリードリヒにしてもロマンス派の画家なんて書いてある。ハーレクインじゃないんだから、、、。
しかも、フリードリヒはこのアルテ・マイスター・ギャラリーの分館みたいな所に所蔵してあるので、ここを訪れた人でも殆どの人は見逃していると思う。
しかし、画家が残した絵って、お墓に眠る遺骨みたいなものでもある訳だから、出来たらその人が生まれた土地とか、活躍した都市に収まっているのが自然なんしょうね。
後に生きた人の欲望の対称になってお骨がてんでばらばらみたいな状態な訳です。
ジョルジョーネ様安らかにお眠りたまえ。

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2006年07月14日

北のフィレンツェ

再び北のフィレンツエ、ドレスデンに話題を戻します。
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これは、ドレスデン城の外壁のマイセン磁器タイルに描かれた歴代王の絵。
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そして、近頃テレビでも紹介されているマイセン磁器で作られた鐘が鳴る時計。

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そして、これがその下に広がるツヴィンガー宮殿で、この宮殿の中にアルテ・マイスター・ギャラリーがあり、各国から集めた絵画が展示されている訳ですが、特に僕がここでお勧めしたいのが、まず、このフェルメール。
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フェルメールは聖書などの一場面を描く物語画から市民社会の日常を描く風俗画に移行した画家として語られておりますが、なにやらこの絵。シチュエーションが怪しいゾ、、、。酒に酔った男が女の胸に手を置き、お金を渡そうとして、さらにその背後に黒い頭巾を被った婆さんが、、、。そう、これ、「取り持ち女」というタイトルで婆さんが男に娼婦を取り持っているシーンを描いた、風俗画というか「フーゾク画」。テーマは現代に置き換えたらさしずめキャバクラみたいな感じでお下劣なんだけど、画面が醸し出すオーラのなんと気品のある事。
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そして、その隣に手紙を読む女があるんですが、、、。
フーゾク画を見たあとでは、このシチュエーションも、密かに窓辺で良からぬメールを読んでいる主婦のよろめきドラマ?なんて勘繰ってしまったりして、、、、。
ま、絵に込められたその辺のメッセージは、下世話なものか、ロマンティックなものなのかは、今だ謎で、これからも色々な説が語られる事でしょう。
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2006年07月04日

フリードリヒ

京都の人の前で「京都に行ったら、美味しいイタリアンを是非!」などと言ったら、顰蹙を買うだろう。何故って、「京都には立派な京料理があるわけだから、京都でイタリアンはないでしょう」というわけだ。昨今、ドレスデンを特集したテレビや雑誌の記事で、ドレスデンのお宝として、ラファエロの聖母子像を紹介しているが、これは、「京都でイタリアン」と同じ事。ドレスデンの人間が聞いたら眉をしかめるだろう。
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旅に出たら、その土地で育まれた料理を食べるように、その土地で育まれた美術にまず注目しましょう。そう、ドレスデンと言えばまず第一にフリードリヒ。確かに、マリア様と天使を描いたラファエロの方がポピュラリティーを得るのは理解出来る。でも、ここの土地を愛し丹念に描き上げた霊感に満ちた風景画に是非注目をして欲しい。フリードリヒは日本ではあまり有名でないが、彼から影響を受けた人達の名前をあげたらきりがない。ヴェンダース。ホッパー。ワイエス。驚くかもしれないが日本では東山魁夷なんて人も多大な影響を受けている。殆どの日本の画家がフランスに留学した当時に東山魁夷がドイツに留学していたという話はあまり知られていないが、この絵を見ればその影響が理解出来ると思う。
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左がフリードリヒ。右が東山魁夷の「残照」。
フランス料理やイタリア料理だって、大昔からいろんな国の影響を受けて今日があるように、我々が日本的と思い込んでるものの中にも異国のエッセンスが混じっていたりするのだ。
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2006年06月09日

雨のミュージアム

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ワールドカップ前夜祭が行われた、ここ、ブランデンブルグ門前のパリ広場からウンター・デン・リンデン(菩提樹の木の下という名の通り)を東に一キロ程歩くと、シュプレー川の中州にある美術館島に出ます。
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これは、その美術館島にあるAlte Nationalgalerie(旧ナショナル・ギャラリ−)。丁度僕が行った時、スペインの画家ゴヤの展覧会をやっていて、「ベルリンでゴヤが見れるとはなんとラッキー!」などと喜んだのもつかの間、雨の中、傘をさしながら、なんと、四時間も並ばされました。パリ、フィレンツェ、ロンドン、どこの都市でも美術館に入る際、一時間程の我慢は覚悟しなければなりません、しかし、なんと、四時間とは、、、。中に入って分かったのですが、ドイツ人は皆頭にヘッドフォンを付けて説明を聞きながら、じっくり鑑賞してるんですね、それでなかなか進まなかったんです。しかし、これと対照的にポツダム広場近くにある現代美術を展示している Neue Nationalgalerie(新ナショナル・ギャラリ−)はがらがらですぐ入場できます。古典に人がどっと押し寄せ、現代はがらがら。今、ベルリンではオスタルジーなどという言葉があって、オスト、つまりイースト(旧東)のノスタルジーが注目されています。SF的な未来と、オスタルジー。ピカピカに尖った最先端なものと、どこか懐かしい癒し系世界。この相反する二つの要素が増々ベルリンを魅力的なものにしてゆく事でしょう。
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2006年05月18日

ゾーヴァさん

 sova.jpg
ベルリンへのアクセスはテーゲル空港から、タクシーで25分くらい。でも初めてこの都市に対面する時、どこで降りるか?つまり、どこのホテルを予約したかで、この街の第一印象は大分違います。例えば、ブランデンブルグ門あたりで降りると、「まあ、なんてこの街はおしゃれな事(古都)、パリみたい」という印象を抱くでしょう。しかし、旧銀座にあたるクーダムあたりでおりると、寂しい、廃れてる、と、まあ「ベルリン天使の詩」のあの暗いトーンを目の当たりにする事になります。まず、街で見かける人の数が東京の五分の一くらい。空っぽのショウウインドウ。空きやのビル。そんな夕暮れの街を雑誌片手にイタ飯屋を目指して歩いてる時の事でした、大通りから寂しい裏通りに入って、公園の前にさしかかった時。眼の前を犬らしきシルエットが横切ったのですが、その、シルエット、良く見ると、「わぁ-、狐だ!」。こんな大都市で狐を見るとは!
 それから、暫くしてミヒャエル・ゾーヴァさんの「ゾーヴァの箱舟」という画集を開いたら、序文にベルリンの家の窓から、雪の夜に線路を歩く狐を見た話が載っているではありませんか、この不思議な感覚がゾーヴァさんの絵に描かれているんですね。電車に乗った兎。池に飛び込む豚。動物たちが現実の世界に迷い込んで、、、。
 そう言えばベルリンって名前もベア、「可愛い熊ちゃん」みたいな意味で、街の至る所に熊の置物が立っていました。で、東京の東京駅にあたる一番中心の駅の名前がなんと、ツォーって言ってズー、つまり「動物園」って意味なんです。そう考えると、ベルリンの魅力を堪能するなら、セレブなブランデンブルグに滞在するより、寂れたクーダム・エリアでゾーヴァワールドを体験をした方がお得というような気がしてきました。
 さて、ドイツモードの記事、明日はクラフト・ワークさんです。なんか、笑っていいともみたいになっちゃいましたが。


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2006年05月17日

ヴェンダースさん

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 昨日は、神保町のカラオケボッックスに舞い降りた、エンジェル・ボイスの話をしましたが、今日はベルリンに舞い降りた天使の映画を監督したヴェンダースさんの写真の話をします。この前の日曜、表参道を歩いていたら、ヒルズでヴェンダースと奥さんのドナータさんの写真展を開催していました。ヴェンダースの写真がプロ級である事は、すでに Written IN The Westという写真集で知っていましたが、オリジナル・プリントを見て新たに驚きました。2メーツル程のパノラマ・サイズに引き延ばされた作品群はディテールのリアルさもアメリカのニューカラーズの写真家達に引けをとらないものですが、それよりも、「尾道」の風景がヴェンダースの視線を通すとこんな風に映るんだっていう事に驚かされました。ポスターになった、 The Dead Treeという作品は、まさにドイツ、ロマン派の画家フリードリヒのビジョンを彷彿させるもので、逆光でシルエットと化した木の背後にたれ込めた雲が流れる空。眼下に尾道の建物や海がきらきら光を反射して広がってます。会場で流れていたビデオも良かったです。まず、ヴェンダースのナレーションが「ワタシノ、ショウガイデ、イチバン、スキナ、エイガヲアゲロ、トキカレタラ、マヨワズ、ヤスジロウ・オズ、ノ、トウキョウモノガタリ、ヲ、アゲマス」と流れ、この東京物語の最初と最期のシーンに登場する尾道に、いつか行きたかったという、あつい思いが語られ、画面は実際の東京物語のシーンからヴェンダースの撮影風景へと移行して行きます。また、この作品群をたった十日くらいの旅行で撮影してしまった、と言う事も驚きです。奥様の作品も、日本の大正から昭和の頃の福原信三とか福原路草を感じさせる懐かしいムードの作品でとても魅力的です。
日本人が「小泉政権で格差が広がった、とりわけ、中央と地方の格差は深刻なものであります」などと、不毛な議論をしている間に、ドイツの二つの才能が表参道ヒルズでしっかり「尾道キャンペーン」を展開してくれたとは、
さて、ワールド・カップも間近ですので、しばらくドイツ・モードの記事を
続けようと思います。明日のタイトルはゾーヴァさん。です。
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