2018年04月26日

「ミスト」

サニーデイ・サービスのPopcorn Balladsというアルバムに「彼女の名前はクリスマス♪」と繰り返す歌があって、最初聴いた時はヘンテコな歌だなと思ったのだが、フランス人がメリー・クリスマスの事を「ジョワイユ・ノエル」と言っているのを聞いて、あっ、そうかクリスマスはノエルなんだ、じゃ、オアシスのボーカル、ノエル・ギャラガーは名前がクリスマスなんだ(彼女ではないけれど)と思った。

ノエル=クリスマスならジョエルは?と調べたら、こちらは旧約聖書の著者とある。
だからシェフのジョエル・ロブションは名前が、歌手のビリー・ジョエルは姓が聖書なんですね。

欧米にはこういうキリスト教にちなんだ名前が結構あって、「クリスティーン」はキリスト教徒。マリアは説明するまでもありませんが、マイケル(英語)ミッシェル(仏語)ミヒャエル(独語)は大天使ミカエルが由来。他に天使ではガブリエルも。
そうか、マイケル・ジャクソンもピーター・ガブリエルも天使だった?のか、笑。

無宗教を自認する人の多い日本では(自分も例外ではないが)ちょっと理解しがたいかもしれないがキリスト教文化圏では名前だけでなく、美術や物語にもかなりキリスト教が関係しています。
映画については「奇跡の丘」から「ジーザス・クライスト・スーパースター」「ゴダールのマリア」から最新の「シェイプ・オブ・ウォーター」まで、例を挙げだしたらきりがありません、、。

キングの小説で一番それを感じたのが「グリーン・マイル」です。まづ、ふんずけられた鼠に息を吹きかけて生き返らせたり、病を癒したりする奇跡を起こす黒人の大男の名前が「ジョン・コフィー」。イニシャルは「J.C」ですからジーザス・クライストを連想させます。
そして、向かえの牢屋に収監されているフランス人の囚人の名前がドラクロワDelacroix。前置詞de女性名詞の冠詞laにcroix 「十字、十字架」。
また、処刑に使われる電気椅子自体が磔刑が進化したものだし、処刑の2日前から好きな食べ物のリクエストをさせてもらえるのも「最後の晩餐」を連想させる。電気椅子に向かうグリーン・マイル(緑のリノリウムを貼った通路)はまるでゴルゴダの丘に向かう悲しみの道の様だ、、、。
ミスト(モノクロ).jpg
さて、前置きが大変長くなりましたが、「ミスト(霧)」の新装版のお知らせです。
ミストは霧に覆われた街でスーパー・マーケットに閉じ込められた人達に、霧の中から現れれた怪物が襲いかかるパニック・ホラー
です。人間対得体の知れない怪物の手に汗握る戦い。
ミスト( 入稿データ).jpg
でも、再度読み返してみると、閉じ込められたスーパー・マーケットの中で、当初ただの気の触れた婆さんとしか思われていなかったキリスト教信者のミセス・カーモニーの存在が、徐々にに預言者としての共感を人々から集め、自信に満ち、エキサイトして行く様子がとてもスリリングで興味深いのです。
キング作品では他に狂信的な母親に育てられた少女「キャリー」のお話も有名ですが、「ミスト」は宗教と人間との関わりについてのキングの深い洞察力にもうならされます。
以前読まれた方も、初めての方にも是非読んでいただきたい一冊です。
また、グリーン・マイルも手がけているフランク・ダラボン監督の映画ミストはエンディングこそ若干異なりますが、そちらも楽しんで頂けるとより味わい深いかと思います。

さて、キリスト教文化圏における人名についてダラダラと無駄話をしましたが、日本の小説で思い浮かぶのが村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」に登場する女性「木本沙羅」。お釈迦様は二本並んだサーラ樹(沙羅双樹)の間に、頭を北に向けて床を用意し、最後を迎えたと言いますから「木本沙羅」はすこぶる仏教的な名前かと思います。
ミスト文庫本.jpg
ま、そんな事を考えながら昔読んだ本を再度読み直すのも楽しいものです。
新緑の季節に是非新装版『ミスト』を定価860円+税で文春文庫から。









posted by 新策論 at 17:51| Comment(0) | 読書 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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