2025年02月28日

『小暮写真館』

本日2025年2月28日『小暮写真館(上・下)』(宮部みゆき/新潮文庫)が発売されました。
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さびれた商店街に佇む、閉店した小暮写眞館。これをレトロで味がある、と気に入った変わり者の親と弟と一緒に、高校一年生の花菱英一は、この古家に引っ越してきた。楽しげな家族をよそに戸惑う英一は、ある日、店先で見知らぬ女子高生から一枚の封筒に入った写真を渡される。「神社のフリマでノートを買ったら、これが挟まっていた、ただ、この写真がただの写真じゃ無い。あり得ない所に女の人の顔が写り込んでいる心霊写真だ。オタクの写真館の名前が入った封筒に入っていたから、どうか責任持って処分して欲しい」英一は友人のテンコの協力も得てこの心霊写真の謎を解き明かそうとするが──。写真に込められた〈想い〉を辿る、心温まるミステリー。
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何処にでも有りそうな街の、何処にでも居そうな人達が繰り広げる物語なのに、最後まで一気に読まされる。こう言うの書かせたら宮部さんの右に出る人は居ないんじゃ無いかと思わせる傑作長編ミステリー。
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2024年11月15日

柳家三三独演会

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落語家の柳家三三(さんざ)独演会が2025年で二十周年を迎えます。この度、その記念のビジュアルを担当させて頂きました。
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落語のポスターやチラシは一般的には噺家さんのポートレイトの場合が多いのですが、今回は語られる物語世界を背景に、その中に噺家がタイムスリップして行くような設定を描きました。
IMG_6883.jpg2025年度の演目は幕末から明治初期の落語会を牽引した三遊派と柳派のトップ三遊亭圓朝と談洲楼燕枝の長編噺「名人長次」と「西海屋騒動」を、それぞれ六か月連続で挑むようです。毎月お通いになればもちろんの事、途中の一回だけを聞いても十分楽しめるような構成になっているようです。会場は日比谷のイイノホールなので五百人収容できますが、行かれる方は早めにチケットをお求めください。七時から始まって、終わる頃にはお腹がすきますが地下に食堂街・イイノダイニングがあります。落語を聞いて江戸にタイムスリップしたら熱燗で一杯なんて言う週末をお過ごし下さい。
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2024年11月07日

グラーキの黙示3

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イギリスのホラー作家ラムジー・キャンベル著クトゥール神話作品集『グラーキの黙示3』が出版されました。
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1・2巻では水中に何者かがいるという気配を描き。今回の3巻では湖畔の家が廃墟と化し、湖底からクリーチャーが姿を現わしたところを描きました。
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クラウドファンディングで編集・出版された書籍なので支援者の皆様には既に発送されているようですが、書店・アマゾンなどの一般販売は12月13日より始まる予定のようです。
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2024年09月04日

コロラド・キッド

本日2024年9月4日スティーヴン・キングの新刊「コロラド・キッドThe Colorado Kid」が発売されます。
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ある4月の早朝、海風が吹き付ける中、ハイスクール陸上部の生徒がジョギングの最中に奇妙な男に出くわした。その男、上着も着ずに海岸の屑籠に寄りかかっている。「寝ているんですか?寝ているのなら、起きた方がいいですよ」と、声をかけるが・・・。ロブスターが名物のメイン州の島、ムース・ルッキット島に出現した男の謎を巡る表題作「コロラド・キッド」に、
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かれこれ24年前にアーティストハウスという小さな出版社から出版された「ライディング・ザ・ブレットRiding The Bullet」と,いう長らく入手困難だった幻の二編。

IMG_6623.jpgさらに、本邦初訳の中編「浮かびゆく男Elevation」を加えた、豪華三点盛りの日本オリジナル中編集デス。
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2024年08月06日

「日本扇の謎」

本日2024年8月7日有栖川有栖さんの国名シリーズ「日本扇の謎」が発売されます。
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国名シリーズとは「英国庭園の謎」とか「カナダ金貨の謎」という国名にちなんだテーマをめぐるミステリー。「ロシア紅茶の謎」から始まって今年で丁度三十年になります。そこで「国名シリーズ30周年」を記念して、通常のノベルズ版(イラストの周りに国旗の色をあしらったもの)に加えて単行本の「愛蔵版」も同時発売いたします。
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ノベルズ版の本文は上下・二段組で372ページ。
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愛蔵版はゆったりとした一段組でこちらは414ページ。本自体の厚さも重さも、値段(ノベルズ版1540円税込・愛蔵版3850円税込)も異なります。また、装丁も愛蔵版は表一だけでなく、ぐるっと表4(うしろ)までイラストを入れ、さらにその上から題名と扇の形をした線が金の箔押しで施されています。
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本を読みたかったら、いつでも何処でもスマホでデータをダウンロードすれば入手出来る。そんな時代に、物(フィジカル)として手元に残せる本が二種類も同時に出版される事がとても興味深いですね。大阪と東京の大型書店で著者サイン会が実施される様ですが、その整理券の配布申し込みが数秒で終了したとの事。データの時代だからこそ、ここにしか無い、手で触れられる一冊が求められるのかも知れませんね。
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2024年06月05日

「死者は嘘をつかない」

本日2024年6月5日(水曜日)スティーヴン・キングの新刊「死者は嘘をつかない」が発売されます。
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カニエ・ウエストが「Kids see ghosts sometimes(子供は時々幽霊を見る)」というご機嫌なラップを歌っていますが、今回のキングの新作もまさに死者(ghosts)が見えてしまう男の子(Kids )の物語。キングが得意とする青春ホラー・ストーリーですが、何故か今回、物語の舞台がいつもの田舎の小さな街ではなく大都会ニューヨークです。
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文芸エージェントをしている母と二人で暮らしている少年ジェイミーは、死者が見えるだけではなく話もできるのです。ただ、途中から彼のそんな異能を利用したい人が現れて、ジェイミーは面倒な事に巻き込まれてゆきます。文庫本で三百ページちょっとのキングにしてはコンパクトな作品なので、高校生くらいからの若いキング初心者にも読んで頂きたい小説です。
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2024年04月23日

「世界をひらく60冊の絵本」

日経新聞読書欄で中川素子著「世界をひらく60冊の絵本」を見つけ早速ダウンロードして読み始めた。
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そしたら、なんと拙著「乱歩えほん、押絵と旅する男」が紹介されていてビックリした。
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浅草寺の縁日の覗きカラクリの絵の中の娘に一目惚れし、挙句の果て小くなって絵の中に入り込んでしまった男と、その絵を汽車の窓に立てかけて旅をさせている弟。というなんとも奇妙な物語なので、きっと一部の怪奇幻想好きなマニアにしかウケないだろうと思っていたし、ましてや子供になんか薦められないと思い込んでいました。ただ著者は、絵本は子供が対象と受け止められがちなので、恋の絵本は多いわけでもないが、子供だって人を思う強い思いが感じられることがある。と、ことわった上で、実は自分も子供の頃大好きな人の写真を見て、小くなって写真の中に入ってしまいたいと思った事があった。と、子供にも勧めるトーンで紹介して下さっている。確かに、言われてみると一目惚れみたいな事は小学校の低学年でもあったりするかもしれない。ただ、ここ数年は多様性を重んじる世の中になっていて「子供は子供らしく女の子は女の子らしく」みたいな決めつけはむしろ絵本から遠ざかっている様に思えた。僕以外の59冊にも目を通しましたが、
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お人形より蛇やトカゲが好きだった女の子の絵本とか、
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パパが二人いる(ゲイカップル)女の子の話とか、以前ではとても考えられなかった内容の絵本が沢山ある。「女の子はピンク、男の子は水色」みたいな決め付けを大人は改めるべきだ。という記事を近頃新聞で読みましたが、世の中が変われば絵本も変わって行くんだ。と、認識させられた本でした。
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2024年04月08日

ビリー・サマーズ

本日2024年4月8日(月曜日)スティーヴン・キングの新作長編「ビリー・サマーズ( BILLY SUMMERS)」が発売されます。
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今回の物語は怪異抜き(超能力も幽霊も登場しない)の犯罪小説。依頼人から指示された標的は絶対外さないプロの殺し屋のお話です。さて、ビリー・サマーズは幾つもの仮面を被って生きています。本当は教養のある思慮深い男なのに、人前ではズボンのポケットにエロい漫画をしのばせ仕草も喋りも軽っぽくおバカなビリーを演じています。そして、依頼されたターゲットを狙撃するためにデイヴィッド・ロックリッジという偽名を使い、小説家を偽った生活を始めます。自宅では近所の子供とモノポリーで遊んだり、仕事場でもフロアの連中とも一緒にランチをしたりと、すっかり庶民の中に溶け込んで暮らします。
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ただ、一旦ミッションを遂行(狙撃を実行)したら指名手配(WANTED)の身で、テレビや新聞にも顔が出ますから、また別の仮面を用意しなければなりません。怪人二十面相とかアルセーヌ・ルパンの様な変装の名人は過去にもいましたがビリー・サマーズもあの手この手を使い後半はドルトン・スミスというIT技術者を名乗り変装と逃走の日々送ります。また、潜伏してる家に若い女性アリスが転がり込んで、一緒にロード・ムービーする展開になります。作中、自伝小説的なものが綴られ、ビリーの過去がわかってくると、徐々に仮面の裏側(BEHIND THE MASK)が見えてきます。
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ご興味を持たれた方はこちらから冒頭の二章と、訳者と担当編集者の対談を読む事ができます。
https://bookwalker.jp/ded07000c1-20b2-4b06-abeb-e49822e122a8/

また、ビリー・サマーズはレオナルド・ディカプリオ主演、J・J・エイブラムス監督で映画化が進んでいるようです。
https://theriver.jp/dicaprio-abrams-billy-summers/









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2023年08月04日

ピープショー

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乱歩えほん「押絵と旅する男」は浅草寺の境内の覗きカラクリ屋の押絵の中の娘に恋をしてしまった男の物語ですが、映画もテレビも無かった時代、このような見せ物が唯一のエンタメだったようです。精緻に作られた押し絵に光を当て、それをレンズ越しに眺める視覚装置。ストーリーは八百屋お七みたいなドラマチックなメロドラマが好まれた様です。さて、このカラクリ箱は、江戸時代にオランダより伝わった、パースペクティヴ・ボックスとかピープショーと言われた装置が娯楽用に改良・発展したものです。さて、丁度今、恵比寿の写真美術館の三階で『覗き見る、まなざしの系譜』という展覧会が開催中です。
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カメラオブスケラに始まり二枚の写真を左右の目で別々に見る事によって立体感を得るステレオ・スコープカメラなどヨーロッパで発明されて人々に愛された数々の装置が展示されている様です。昔から人々は仮想空間をリアルに疑似体験する事に夢中だった。現代のメタバースとかVRもこの歴史の連なりの中の一部なのでしょうね。
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4536.html
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2023年07月11日

ヤポンス・ロック

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フェルメールには珍しく男性をモデルにした二点の絵。「地理学者」と「天文学者」というタイトルが付いていますが、彼等が着ている上着に注目してください。何か、これ見覚えがありませんか?そう、これ、日本の防寒具・綿入れなんです。当時日本は鎖国政策を取っていましたが長崎の出島を通じてオランダの文化・学問が入って来て、逆に東洋の絨毯や衣服が持ち帰られた。綿入は「ヤポンス・ロック(日本風上着)」として当時のオランダの知識人・富裕層の間で愛用されていたようです。さて、この二点の絵のモデルはずっと生物学者ルーウェンフックと語られてきました。写真が無かった当時、顕微鏡で覗いた画像をフェルメールがデッサンして。替わりにルーウェンフックはカメラ・オブスキュラに付けるレンズをフェルメールに提供していたと・・・。
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ただ、近頃フランスの哲学者ジャン・クレ・マルタンが「フェルメールとスピノザ永遠の公式」という本で、これはルーウェンフックじゃなくて哲学者スピノザだと言っています。また、哲学では生計を建てられないスピノザはでレンズ磨きを副業としていた、と、思われて来ましたが、実は高度な技術を持ったレンズ職人であったそうです。
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言われてみると、この肖像画のモデル、スピノザに似ている様な気がして来ました。
posted by 新策論 at 11:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする